JRC蘇生ガイドライン2015


日本蘇生協議会 (2015.10),  JRC蘇生ガイドライン2015, オンライン版



【GRADE利用基準を使ったGRADE方法論の評価】


GRADEを適用または利用したとする基準を改変し、国内で発表されたGRADEガイドラインの方法論を"個人的に"評価したものです。ここでのGRADEガイドラインの定義は、「エビデンスの質評価と推奨の強さのグレーディングにGRADEを採用したと記載しているもの」としました。
**: GRADE working groupによる基準は#1〜#6の6項目であり、#0は本判定のために相原が追加した項目です(追加した理由は、この#0の項目が"No”ならば、基本的にはその後の評価は不要というか、判断不可能ということになります)。判定結果は、Cochrane risk of biasと同様に、yes(緑色), no(赤色), unclear(黄色)の3段階で表示しました。


GRADEを適用または利用したとする基準(改変)**

判定 コメント

0. アウトカムを主体としたエビデンスの統合をしているか?
推奨決定に関与するエビデンスの確実性評価がbody of evidenceにもとづくものならば、以下の6項目のGRADE基準について評価する。

>

Yes

アウトカムの重要性が評価され、その後にアウトカムを主体としてエビデンスが統合されている。

1. エビデンスの確実性(エビデンスの質(quality of evidence)としても知られている) は、GRADE Working Groupが採用する定義により、一貫して定義すべきである。
記載内容はGRADEとして適切か?


Yes

GRADEの定義が使われている

2. エビデンスの確実性を評価するための各GRADEドメインを、用語の違いがあるにしても、明確に記述すべきである
記載内容はGRADEとして適切か?


Unclear

治療に関してはGRADEドメイン(等級ダウンの5要因、等級アップの3要因)について記載されているが、診断に関するGRADE基準は明確な記載がない。

3. 各重要なアウトカムの全体的なエビデンスの確実性(overall certainty)を、4段階または3段階 (例: 「高 high」、「中 moderate」、「低 low」/「非常に低 very low」)、にて、GRADE Working Groupが採用する定義に合致した各段階の定義に基づき、評価すべきである。
記載内容はGRADEとして適切か?


Unclear

各アウトカムを中心としたbody of evidenceについて、エビデンスの確実性が4段階で分類されているが、本文とエビデンステーブルの内容が一致しないものがある。また、一部のbody of evicenceの評価には誤った判断がある(例、なんらかの限界があってグレードダウンしたものを、効果が大きいということでグレードアップ。これは、ILCORのCOSTARにおいて、観察研究のQoEにはGRADEを使用しないという当初の方針が途中でGRADE適用に代わったことが原因による不備のようである。さらにはJRC単独で内容を修正できないという制約があるようだ)。
診断に関しては、研究デザインを含めてGRADE評価には疑問がある。


4. エビデンスの要約とエビデンスから決断の基準(evidence to decision criteria)は、エビデンスの確実性と推奨の強さに基づいて判断すべきである。理想的には、エビデンスの確実性の評価にはエビデンスプロファイルを使用すべきであり、また、エビデンスプロファイルはシステマティックレビューに基づくべきである。少なくとも、評価されたエビデンス、ならびにそのエビデンスの同定や評価に使用した手法を明確に記述すべきである。
記載内容はGRADEとして適切か?


Yes

多くのCQに関してエビデンスプロファイルやSoFテーブル、またはEvidence to Decision tableのリンクが公開されており、判断の透明性が高いものとなっている。
例、Evidence profile (acs_737),  SoF table (acs_338),  Evidence to Decision table (acs_779)

5. 推奨または決断の強さと方向を決定するためには各GRADE基準について明確に考慮すべきである。理想的には、検討された研究エビデンス、追加の考慮事項や判断について透明性を高く記録するために、GRADEのevidence to decisionフレームワークを使うべきである
記載内容はGRADEとして適切か?


Yes

GRADEアプローチに準じて、推奨評価のための4要因について記載があり、患者にとっての価値観やILCORの見解が記載されている。

6. 推奨の強さは、2つのカテゴリ(選択を支持、または反対)を使って、各カテゴリについてGRADE Working Groupが採用する定義に合致する(用語の違いがあるにしても)「強い」または「弱い/条件付き」の定義に従って評価すべきである。
記載内容はGRADEとして適切か?


Yes

推奨の強さの評価は2段階で推奨の方向性も2種類であり、なおかつ判断は適切なものである。


最終評価:国内においてはGRADEを使った医科の診療ガイドラインとしては最初のものである。
治療介入に関するGRADEにとどまらず、診断介入に関するGRADEも記載されていますが、上記#2, 3コメントのように、body of evidenceの評価を読む上では注意が必要です

2016年4月に、PICO評価結果として、エビデンスプロファイルやEvidence-to-Decistionテーブルへのリンク集も公開されました。(JRC蘇生ガイドラインPICOリスト
また、JRC蘇生ガイドラインとILCORの関係も参照ください(JRC_guidelines-2015.docx)。

GRADEガイドライン作成者へのお願い:
GRADE利用基準を満たし、GRADEを適切に利用したといえるガイドラインを作成したならば、ぜひともGRADE working groupに連絡していただきたい。
本判断結果について、間違いあるいはご意見があるようでしたら、相原まで連絡ください。
mailto:ezy01757@nifty.ne.jp
日本語でGRADEを理解するためには、診療ガイドラインのためのGRADEシステム(第3版、2018年)、あるいはGRADEシステムに関するweb資料、が役立ちます。